藤崎流古武術伝
薬物猟奇
幕間
| ――某町立病院。 深夜。冴木は寝苦しさに目を覚ます。個人用の病室。部屋には冴木一人のみ。雄一郎達の一件から意識を失って以降、最初に目覚めた場所であった。 「ここは…病院か?僕は…一体…ううっ。」 冴木は起き上がろうとするが、激しい腹痛で身動きが取れない。雄一郎の最後の一撃の余韻が、未だに冴木を苦しめていた。 「くそっ。藤崎雄一郎…。あいつさえいなければ…。」 「だから前々から注意していたのだ。」 「!」 突然聞こえてくる声に冴木は息を殺す。ガラガラと出入り口が開くと、そこには大柄な男の人影が浮かぶ。 「なんだ…あんたか…。ビックリしたぜ…。」 「物の見事にやられたようだな。趣味に興じて勝手な行動に出るから簡単に尻尾を掴まれるのだ。」 「それは悪かったと思ってる。だから、今度は確実にあいつらを…。」 「とにかく、ここにいつまでもいたのでは面倒だ。これに入って病院を抜け出すんだ。」 その人影はそう言って、一メートル四方もある分厚いトランクを差し出す。 「おいおい。俺は怪我人だぜ?いくらでかいからってそんなトランクの中に…。」 「大丈夫だ…。」 人影はそのまま冴木のベッドまでやってくる。 「…うぐっ!」 「誰も生かしてここから出すとは言ってないからな…。」 人影はトランクを持つ手とは反対の手で冴木の首を鷲掴みにする。 「!!!」 ――ゴキュッ! 鈍く、何かが折れる音が響く。人影の手から開放された冴木の首は、枕に傾れ掛かり、口内の唾液を垂れ流す。それ以外は、身動きはおろか、呼吸すら全くない。 人形も同然になった冴木に掛かっている布団を人影は一気に剥ぎ取る。 「人を人形扱いしていた貴様が、最期には人形以下の扱いを受けるとは皮肉なものだな…。」 人影はそう吐き捨てると、トランクから手を離し、両方の手を冴木の冴木に伸ばしていくのであった…。 ――ゴキッ!グシャ!ベキッ!ガコッ!ブチッ!ペキョ!ブスッ!ドサッ! ――ジーッ…。 その晩、冴木は病院から姿を消した。全身打撲の上、内臓に著しい機能障害を起こしている体で絶対安静となっている彼が、どうやって病院を抜け出したのかはわからない。 ただ、彼の自宅から自家用車がなくなっている点から、移動手段は車と考えられる。 数日後、地元山中の川の中から彼の車が発見される。重症の彼の容態から、道路からの転落と推測。 彼の消息については未だ不明。川の激流により、捜索は困難を極めており、警察の方でも数週間のうちに捜査を打ち切る模様。 尚、この事については一部の関係者にのみが知るのみで、一般には公開されていない。また、この事実を知る者についても、一年後には危難失踪という形で死亡認定されるという形で承諾を得た。 以後、この事実が外部に漏れる事はなかった……。 |