藤崎流古武術伝




プロローグ

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それは、幼稚園での出来事。
降りしきる雨の中、水浸しの砂場で見た二人の少年。一人がうずくまり、もう一人はそれを見下ろしている。

ガス!ガス!
立っている少年がうずくまっている少年を何度も踏みつける。その少年は声も上げず、ただそれに耐え続けている。もはや気力を失っているようだった。

走り出す。駆けつける。理由はわからない。
見ていられなかった。体が勝手に動く。二人の少年のもとへ。

立っている少年の方に飛び掛かる。どうしていいのかなんてわからない。
ただがむしゃらに。その少年の行動を止めようとした。

少年も黙ってはいなかった。飛びつかれると同時にこっちを地面に叩きつける。力の差があまりにもありすぎた。
呆然と見上げてみる。目が合った瞬間、驚いたような、怒ったような表情で少年は叫ぶ。

「お前、藤崎の子供か!あの憎たらしい藤崎家の!見てるだけでもムカツクんだよ!お前らのせいで俺達は・・・!」

少年は暴力の矛先をこちらに向けてくる。先程以上に怒り狂う。
殴られて、蹴られて、罵られて、何がなんだかわからなくなるほどに打ちのめされる。


痛烈に感じて痛みが、段々と薄れていく。触れられるという感覚までも薄れていく。そして、意識までもなくなる。ただ、体の中だけが、熱くなっていく感覚だけがはっきりとしていく・・・。

・・・。

・・・。

・・・。

気が付くと少年は倒れていた、体中から真っ赤な血を流して。
もう一人の少年はいなくなっていた。帰ったのかもしれない。
なんでこんな事になっているのかわからない。ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。


やがて、先生がやってくる。いろいろ聞かれるが、何も知らない。覚えてない。こっちが知りたいくらいだった。

そして両親がやってくる。いつの間にか、こっちが悪者にされているみたいだった。何にも知らないって言っているのに。

その後、両親は何も言ってこなかった。
その代わり、何も答えてはくれなかった。
結局、わからないまま終わってしまった。



―ただひとつ、この体にたぎる力だけを残して。


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